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Measuring principle 超音波厚さ計の仕組み・種類・測定方式

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超音波厚さ計の仕組み

超音波厚さ計は、トランスデューサー(プローブ・探触子)と呼ばれるセンサーから発信した超音波が、測定物の反対面(裏面)に反射し戻ってくるまでの時間(伝播時間)を計測し、その伝播時間から厚さを算出します。

具体的には、伝播時間(t)に測定物の音速(C)を乗じ、さらに伝播時間は往復に要する時間のため、1/2を乗じて厚さを算出します。

厚さ(D)= 1/2 × C × t
C:音速 t:伝播時間

超音波厚さ計の仕組み

材料の音速

測定物の音速は、材料ごとにおおよそ決まっています。下の表は、主要な材料の音速です。ただし、鋼でも鋼種が異なると、音速が異なります。鋼種の違いによる音速の差は比較的小さく2%程度ですが、アルミニウムや鋳鉄、ステンレスでは差が大きく種類が違うと20%以上も音速が異なる場合もあります。
また、全く同じ材質・材種でも温度により音速は異なります。一般的には、数℃程度の温度差による音速の違いは測定上大きな問題にはなりませんが、10℃以上異なると、測定結果に影響を及ぼします。

正確な厚さ測定の為には、正しい音速を把握することが大切です。測定物と同じ材質・材種の試験片を用意し、実際の測定と同じ温度環境にて、音速の校正を実施することが重要です。

材料 音速(m/s)
5,920
ステンレス 5,660
アルミニウム 6,380
鋳鉄 4,550
プラキシガラス 2,690
ポリ塩化ビニル 2,390
ポリスチレン 2,340
ポリウレタン 1,780

単位:m/秒

計測できない測定物

超音波厚さ計は、超音波の伝播時間をもとに厚さを算出します。このため、トランスデューサー(プローブ・探触子)から発信された超音波が、反対面(裏面)で反射し再度トランスデューサーで受信されないと厚さを計算することができません。

例えば、測定面と反射面が平行でない場合、送信した超音波がトランスデューサーに戻ってこないため、厚さを測定することができません。
また、ゴムのように超音波が途中で減衰して消えてしまう高減衰材も測定ができません。木材や発泡プラスチックのように気泡を含む素材も、超音波が気泡を通過しないため、測定することができません。

接触触媒(カプラント)について

超音波は、物質の境界面で境界で反射するという性質を持っています。特に金属や樹脂等の固体と空気は音響インピーダンスが大きく異なるため、個体から空気、空気から固体へはほとんど超音波が伝播しません。このため、トランスデューサーと測定面の間には、超音波を伝達させるために、少量の液体を塗布し空気の層を無くす必要があります。
液体には、水や油の他に、カプラントと呼ばれる専用剤が使用されています。カプラントは超音波検査専用に作られているため、水や油よりも超音波の伝達に優れており、より高精度で信頼性の高い測定を行うことができます。

超音波厚さ計の種類

超音波厚さ計を2つに分類すると、一般・腐食検査用と、精密検査用の2種類の超音波厚さ計に分けることができます。

一般・腐食検査用超音波厚さ計は、名前が表すように配管やタンクの腐食による残存肉厚の測定から、工場での金属等の加工後の厚さ測定まで、幅広い用途で使用できる汎用性の高い超音波厚さ計です。二振動子探触子という、超音波の発信部と受信部が分割されたトランスデューサー(プローブ・探触子)を使用します。ニ振動子探触子は、反対面(裏面)が腐食・孔食などで状態が悪くても測定することがででき、また平板だけでなく配管のような曲面部の測定も可能です。振動子の種類や大きさ、周波数により様々なタイプの二振動子探触子がありますが、標準的なもので1~200mm程度(鋼換算)と測定範囲が広いことも特徴の一つです。

二振動子探触子二振動子探触子

精密検査用超音波厚さ計は、高い精度が必要とされる厚さ測定に用いられます。1/1,000mm単位で厚さを測定することができるため、わずかな厚さの違いを計測することができます。また、1mm以下の厚さも測定することができるため、薄物の測定にも用いられています。
精密検査用超音波厚さ計は、一振動子探触子と呼ばれる、発信部と受信部が1つになったトランスデューサー(プローブ・探触子)を使用します。一振動子探触子は、二振動子探触子よりも測定精度が高いことが特徴です。より厳しい厚さ管理が必要な測定で使用されています。一方で、表面や反対面(裏面)の状態が悪い場合は測定することができません。また、曲面の測定にも適していないため、なだらかな湾曲部以外は測定することができません。

*一般的な一振動子探触子は曲面の測定には適しませんが、湾曲部の測定用に開発された特殊な一振動子探触子では、二振動子探触子では測定できない小径配管の測定も可能です。

一振動子探触子一振動子探触子

超音波厚さ計の測定方式

超音波厚さ計は、トランスデューサー(プローブ・探触子)から発信した超音波が、測定物の反対面(裏面)に反射し戻ってくるまでの伝播時間をもとに厚さを算出します。伝播時間の測定には、以下の3つの方式があります。

ゼロ点・第1回底面エコー方式(パルス・エコー方式)
多重エコー方式(エコー・エコー方式)
表面エコー・第1回底面エコー方式(インターフェース・エコー方式)

ゼロ点・第1回底面エコー方式(パルス・エコー方式)は、ベーシックモデルの超音波厚さ計から搭載されている、最もよく使用される測定方式です。試験体の表面状態がある程度悪くても測定が可能で、湾曲部や厚物の測定にも適しています。しかしながら、測定面に塗装(塗膜)が施された鋼板を測定すると、鋼板と塗装(塗膜)の厚さを合算した厚さよりも、大幅に厚い値が表示されてしまいます。
多重エコー方式(エコー・エコー方式)では、塗装の厚さを含まない、素地(母材)の厚さのみを測定することができますが、一方で表面状態や湾曲の影響を受け易く、それらの測定には適していません。
以下の表は、それぞれの測定方式の特徴を示したものです。

測定方式 概要 特徴
ゼロ点・第1回底面エコー方式
(パルス・エコー方式)
ゼロ点と、第1回底面エコー(B1)との時間差から厚さを求める。 最も標準的な測定方式。第一回目底面エコーのみ検出すれば厚さを測定することができるため、試験体の表面状態がある程度悪くても測定することができる。
多重エコー方式
(エコー・エコー方式)
第1回底面エコー(B1)と第2回底面エコー(B2)との時間差から厚さを求める。 塗装の厚さを除いた素地(母材)のみの厚さ測定が可能。一方で、測定には第二回底面エコーの検出が必須のため、試験体の表面状態が悪い場合や鋳鉄等の減衰の大きな材料、湾曲部の測定、厚物の測定には適さない。
表面エコー・第1回底面エコー方式
(インターフェース・エコー方式)
表面エコー(S)と第1回底面エコー(B1)との時間差から厚さを求める 遅延材付きトランスデュ―サーで使用される測定方式の一つ。測定範囲は遅延材の長さに制限される。
測定方式 ゼロ点・第1回底面エコー方式
(パルス・エコー方式)
エコー・エコー方式
(多重エコー方式)
インターフェース・エコー方式
(表面エコー・第1回底面エコー方式)
探触子 接触型 遅延材付き
測定
イメージ
測定イメージ
波形
(エコー)
波形(エコー) 波形(エコー) 波形(エコー) 波形(エコー)
対応機種 ZX-1 / 2 / 3 / 5
ZX-6、CMX、MVX PZX-7
PVX