技術資料(よくわかる講座)

硬さとは

私たちは、日常何気なく、硬い、柔らかいという言葉を使用します。
しかし硬さには、長さや重さと異なり、すべての材料を一律で表す共通した単位がありません。これは硬さが、摩耗・脆さ・曲げ・伸び・ねじりなどの複数の機械的性質の関係性により決まる尺度で、長さや重さのように単一の物理的性質により定義される値ではないからです。

硬さには、「他の物体によって力を加えられたとき、それに抵抗する力の程度を示す尺度」という定義がありますが、力を加える物体の材質、大きさや形状、力の強さ等、試験条件が変わると、試験結果も変わってしまいます。このため、用途や目的に応じて様々な硬さ測定手法が定義され、実用化されてきました。このページでは、様々な硬さ試験についてその原理や特徴を詳しく説明します。

硬さ測定イメージ画像

*距離や質量、時間、温度等の物理量に対し、硬さのように測定手法により定義される値は工業量と呼ばれています。2mは1mの2倍の長さ、10kgは5kgの2倍の重さですが、硬さ600HV(HVは硬さの単位の1つ)は300HVよりも硬いことを表していますが、2倍硬いことを示している訳ではありません。工業量で表される値は相対値です。

硬さ試験について

硬さは、摩耗や曲げ、伸び、ねじりや脆さ等の複数の機械的性質の関係性により決まります。一方で、硬さを測定することで、これらの機会特性を個別に測定することなく、手軽に推定することができます。このため、品質管理において硬さ測定は非常に重要な役割を果たしています。
次の表は、金属の硬度測定で使用されている主な硬さ試験方法を纏めたものです。

試験手法 ブリネル硬さ試験 ビッカース硬さ試験 ヌープ硬さ試験
押し込み 押し込み 押し込み
イメージ ブリネル硬さ試験イメージ画像 ビッカース硬さ試験イメージ画像 ヌープ硬さ試験イメージ画像
硬さ記号 HB HV HK
原理 鋼球または超硬球の圧子に荷重を負荷し、圧痕の大きさから硬さを求める 正四角錐のダイヤモンド圧子を押し込んだときの荷重とくぼみの表面積の比から硬さを求める ビッカース硬さ試験と同じ原理だが、使用する圧子の形状が異なり圧痕はひし形になる。(ビッカースは正方形)
特徴 圧痕が大きい
鋳鉄の測定に適している
圧痕が小さく、小さな試料での測定が可能
焼き入れの深さ等の硬さ分布測定に適している
圧痕が小さく、くぼみ深さも浅い
表面付近の硬さ評価に適している
測定手法 ロックウェル硬さ試験 UCI硬さ試験 リーブ硬さ試験
(リバウンド式硬さ計)
押し込み 押し込み 反発
外観 ロックウェル硬さ試験外観画像 UCI硬さ試験外観画像 リーブ硬さ試験(リバウンド式硬さ計)外観画像
硬さ記号 HR - HL
原理 圧子を一定の荷重で試料に押し付け、その時のくぼみの深さから硬さを算出する ダイヤモンド圧子を所定の荷重で試料に押し付け、金属の硬さに応じて変化する共振周波数を電子的に読み取り硬さを算出する 試料表面に小さな球を衝突させ、落下速度と反発速度から硬さを求める
特徴 測定が簡便で測定者による誤差要因が少ない
熱処理を施した鉄鋼材料の硬さ測定に適している
圧痕が小さく、薄物・軽量部品の測定も可能
ハンディタイプのため、現場(屋外)で使用できる
操作が簡単で素早く測定ができる
ハンディタイプのため、現場(屋外)で使用できる
試験名称 分類 説明
ビッカース硬さ試験 押し込み ビッカース社(イギリス)のスミス氏とサンドランド氏によって考案された試験方法です。ビッカース硬さは、正四角錐のダイヤモンドで作られたピラミッド形の圧子を押し込んだときの荷重とくぼみの表面積の比から定義されます。圧子にダイヤモンドを使用しているため、硬い材料でも測定ができます。また、小物、薄物の検査に適しています。
ヌープ硬さ試験 押し込み アメリカのヌープ氏が考案した試験方法です。ビッカース硬さと同様にダイヤモンド圧子を用いて計測しますが、圧痕はひし形となります。圧子によるくぼみ深さが浅いので、硬化層の断面硬さの測定や、もろい材料の硬さ測定等の微小硬さ試験で利用されています。
微小硬さ試験 押し込み 押込み硬さ試験のうち、ごく小さい試験荷重で行う硬さ試験の総称のことです。具体的には、9.8N(1kgf)以下の試験荷重で行うビッカース硬さ試験とヌープ硬さ試験が、微小硬さ試験として規定されています。
ブリネル硬さ試験 押し込み スウェーデンのブリネル氏によって発明された試験方法です。ブリネル硬さは、鋼球圧子又は超硬合金圧子を用い、試験面にくぼみをつけたときの荷重を、くぼみの表面積で割ることで表されます。鍛造品や硬さが不均一な測定物に適しています。一方で小物や薄物には適しません。
ロックウェル硬さ試験 押し込み アメリカのロックウェル氏が考案した試験方法です。所定の荷重を加えたとき生ずるくぼみの深さの差から硬さを求めます。ビッカース硬さやブリネル硬さと異なり、深さを読むだけなので簡便かつ素早く行えることが特徴です。一方で、測定対象の硬さにより試験方法が異なるため、様々な試料を同一のスケールで比較することができないという短所があります。
ショア硬さ試験 反発 アメリカのショア氏が考案した反発係数を利用した硬さ試験方法です。先端にダイヤモンドチップを埋め込んだハンマーを落とし、跳ね返りの高さから硬さを計測します。操作が簡単で素早く測定ができ、小型で持ち運びができることが特徴です。大きな部品や圧延ロールの硬さ測定で利用されています。
UCI硬さ試験 押し込み UCI(超音波接触インピーダンス)式硬さ計は、ビッカース硬さ試験機をベースに開発された硬さ測定方法です。ビッカース硬さ試験と異なり、圧痕を電子的に評価します。他の測定手法に比べ圧痕が小さく、測定対象が薄物・軽量部品でも測定できることが特徴です。溶接の熱影響部(HAZ)や硬化層、ギヤの歯の硬度測定に使用されています。
リーブ硬さ試験
(リバウンド式硬さ計)
反発 アメリカのリーブ氏が考案した反発係数を利用した硬さ試験方法です。ショア硬さと異なり、跳ね返りの高さではなく、落下速度と跳ね返り速度の比率から硬さを求めます。操作が簡単で素早く測定ができ、また測定器が安価なため、現場や屋外での硬さ測定で広く使用されています。この原理をもとに製作された硬さ計は、リバウンド式硬さ計やエコーチップ硬さ試験機と呼ばれています。

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