技術資料(よくわかる講座)

ボルトの伸びと軸力の関係

ボルトを締めると、ボルト締め付け部(グリップ長さ)は軸方向に引っ張られて伸びます。このとき、ボルトには元に戻ろうとする力、すなわち軸力が発生します。この伸びと軸力には、高い相関関係があります。
下のイラストは、ボルトの伸びと軸力の関係を描いたものです。ボルトの伸びが2倍になれば、軸力も2倍になります。伸びが3倍になれば、軸力も3倍になります。ばねを引っ張れば引っ張るほど、元に戻ろうとする力が強くなるのと同様に、ボルトも伸びれば伸びるほど、元に戻ろうとする力(軸力)は強くなります。

ボルトの伸びと軸力の関係画像

この様に、ボルトの伸びと軸力は、弾性域において正比例の関係にあります。超音波ボルト軸力計は、この関係を利用して、伸びから軸力を算出します。

<実験データ>
ボルトの伸びと軸力の関係

<フックの法則について>
イギリスの科学者であるロバート・フック(Robert Hooke、1635-1703)は、弾性体において伸びと応力は正比例の関係にあるという法則を1660年に発見しました。この法則は、発見者にちなみフックの法則と呼ばれています。ボルトの伸びと軸力には、フックの法則が成り立ちます。

F=kx F:荷重、k:ばね乗数、x:伸び

グラフ

超音波ボルト軸力計の測定原理

超音波ボルト軸力計は、ボルト締結により生じるボルトの伸びを直接測定します。伸びと軸力は正比例の関係のため、測定した伸びにばね乗数を掛けることで、軸力を算出することができます。

ボルト締付けのイメージ

まず、ボルト締付け前に、ボルトの全長を超音波で計測する。

ボルト締付け後に、再度全長を計測し、ボルトの伸びを算出しする。

具体的な手順は、次の通りです。
まず、ボルト締付け前にボルトの長さ(伝播時間)を超音波で測定します。次にボルトを締付け、再度超音波でボルトの長さを測定し、締付け後の長さから締付け前の長さを引くことで、伸びを算出します。

次に、求めた伸びにばね乗数を掛け、軸力を算出します。超音波ボルト軸力測定では、ばね乗数をロードファクター(軸力係数)と呼んでいます。ばね乗数(ロードファクター)は、ボルトの有効断面積やヤング率等の諸元情報から計算する方法と、ロードセルや引張試験機を用いて、実際にボルトを締めて(引っ張って)求める方法の2通りの方法があります。

参考:ボルト両端面の加工について

ボルトの端面に刻印等の凹凸がある場合、トランスデューサー(プローブ・探触子)が端面に密着しないため、測定することができません。もし測定できたとしても、端面が平坦でないため、ボルトの正確な長さを測ることができず、再現性の高い計測ができません。
高い精度で測定を行うためには、ボルトの両端面を平滑に機械加工する必要があります。

ボルトの画像

加工推奨値
両端面の面粗度 0.8a(▽▽▽)
両端面の平行度 //0.02(mm)