技術資料(よくわかる講座)

締め付けトルクと軸力の関係

ボルトは、部材を固定するために使用されます。ボルトが部材を固定する力が軸力で、ボルト締める目的は、適切な軸力で部材を固定することです。
ただし、ボルトの軸力を直接測定するためには、超音波ボルト軸力計のような装置が必要です。このため、作業性がよく手軽に導入することができる締め付けトルクによる締結管理が、広く普及しています。ここでは、締め付けトルクと軸力の関係について説明します。

ボルト締め付け画像

締め付けトルクとは

締め付けトルク式イメージの画像

T = L x F
T:締め付けトルク  L:長さ  F:力

締め付けトルクとは、ボルトを回転方向にまわす力のことです。締め付けトルクによるボルトの締結管理は、作業性が良く手軽に導入できるため、広く普及しています。

大きな締め付けトルクでボルトを締めると、ボルトの軸力も強くなり、より強固に部材を固定することができます。
一方で締め付けトルクが大きすぎると軸力が強すぎ、部材に損傷を与えたり、ねじが破損する危険性があります。逆に、締め付けトルクが小さ過ぎるとボルトが緩む危険性があります。
このように締め付けトルクと軸力には相関関係があり、適正な軸力で部材を固定するために、妥当な締め付けトルクでボルトを締める必要があります。

ねじの呼び径と用途別に締め付けトルクの目安を示した「T系列」があります。
「T系列」は、簡易的に締め付けトルクを決めるための目安にはなります。しかし、「T系列」はボルトの強度から導かれたもので、部材を固定するために必要な軸力から算出されたものではないため、シビアな締め付け管理が必要な締結箇所では使用する事ができません。

単位:N・m
ねじの呼び径 基準T系列 0.5系列 1.8系列 2.4系列
一般 電気関連 自動車関連 建設関連
M5 3 1.5 5.4 7.2
M6 5.2 2.6 9.2 12.2
M8 12.5 6.2 22 29.5
M10 24.5 12.2 44 59
M12 42 21 76 100
M14 68 34 120 166
M16 106 53 190 255
M18 146 73 270 350
M20 204 102 370 490
M22 282 140 500 670
M24 360 180 650 860

次の式は、適切な締め付けトルクを求めるための計算式です。
この式で表されるように、適切な締め付けトルクは、部材を固定するために必要とする軸力、摩擦係数、そしてボルト諸元を元に決定する必要があります。

T = F / 2〔(μs/cos α)・dp + P/π + dw・μw

T 締め付けトルク F 軸力 μs ねじ面摩擦係数
α ねじ山半角 dp ボルト有効径 P ねじピッチ
dw 座面の等価摩擦直径 μw 座面摩擦係数      

締め付けトルクと摩擦係数、軸力の関係

トルクと軸力には相関関係があります。しかし、締め付けトルクの精度をどれだけ高めても、軸力のばらつきはなくなりません。その理由は、摩擦係数です。
締め付けトルクのうち、9割程度は摩擦により吸収され、実際の軸力となるのは、残りの1割程度です。しかも、この摩擦係数は一定ではありません。ボルトおよび非締結部材の固体差(座面・ねじ部の表面粗さ)や締め付け速度により摩擦係数は変化します。

締め付けトルクの誤差を小さくすることは比較的簡単です。ただし、トルクの誤差をどれだけ小さくしても、得られる軸力は摩擦係数次第で、軸力のばらつきを無くすことはできません。締め付けトルクの誤差が±1%の高精度のトルクレンチでボルトを締めると、軸力のばらつきも同様に±1%になる訳ではなく、摩擦係数の変動により、軸力には大きなばらつきが発生してしまいます。
トルクでの締め付けは、摩擦係数の変動により、一般的に2~3割程度の軸力のばらつきが発生すると言われています。

締め付けトルク画像

次のグラフは、y軸にロードセルの荷重を、x軸に超音波ボルト軸力計で計測したボルトの伸びと、トルクレンチの締め付けトルクをそれぞれプロットしたものです。超音波ボルト軸力計のばらつきは非常に小さいことが分かります。一方、トルクレンチは大きなばらつきが発生しています。

伸びと軸力の関係

伸びと軸力の関係画像

トルクと軸力の関係

トルクと軸力の関係画像