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測定事例 - 超音波探傷 White Paper - Ultrasonic Flaw Detection

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平板突合せ継手溶接部の探傷

平板突合せ継手溶接部の探傷

溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
溶接の品質は、溶接条件や溶接工の技量により大きく左右され、不適切な溶接はきずの原因となり重大な事故につながる可能性もあります。このため、溶接部の品質確認は非常に重要で、超音波探傷器はこの品質確認のために広く使用されています。

ここでは、鋼の平板突合せ継手溶接部の超音波探傷について説明します。

※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。

測定方法

溶接部の探傷では通常、一探触子の斜角探触子を使用します。垂直探触子では、余盛のため探触子を密着させることが困難であることと、板厚方向の割れを検出することができないからです。
JIS Z 3060では、斜角探触子の公称周波数、振動子の公称寸法および屈折角を以下のように定めています。

斜角探触子に通常使用する公称周波数

使用する最大のビーム路程 公称周波数
100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz

斜角探触子に通常使用する振動子の公称寸法

公称周波数 振動子の公称寸法
2~2.5MHz 14×14、20×20
3~4MHz 10×10、14×14、20×20
4.5~5MHz 5×5、10×10

STB音速比による屈折角の選定

試験体の板厚 STB音速比 探傷に適用する屈折角
6mm以上、25mm以下 0.990未満 探傷屈折角63°以上72°以下
0.990以上、1.020以下 STB屈折角63°以上72°以下
1.020を超える 探傷屈折角63°以上72°以下
25mmを超え、75mm以下 0.995未満 探傷屈折角58°以上72°以下
0.995以上、1.015以下 STB屈折角58°以上72°以下
1.015を超え、1.025以下 STB屈折角58°以上67°以下
1.025を超える 探傷屈折角58°以上72°以下
75mmを超える 0.995未満 探傷屈折角58°以上67°以下
0.995以上、1.025以下 STB折角58°以上67°以下
1.025を超える 探傷屈折角58°以上67°以下

探傷器の調整

STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内ごとおよび作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。

装置の調整項目 使用する試験片等
入射点の測定(0.5mm単位) STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32
測定範囲の調整
STB屈折角の測定(0.1°単位)
探傷屈折角の測定(0.1°単位) STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法

エコー高さ区分線の作成と領域区分

同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。

STB-A2系試験片もしくはRB-41を使用し、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下はI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間をⅢ、H線より上をⅣとします。

装置の調整項目 使用する試験片
エコー高さ区分線の作成 STB-A2、STB-A21、RB-41A、RB-41B

エコー高さ区分線の作成と領域区分

探傷感度の調整

STB-A2系試験片やA3系試験片、RB-41を用い、標準穴のエコー高さがH線に一致するように探傷感度を調整します。

装置の調整項目 使用する試験片
探傷感度の調整 STB-A2、STB-A21、STB-A3、STB-A31、STB-A32、RB-41A、RB-41B

探傷

きずの傾きによる見落としを防ぐため、使用するビーム路程が250mm以下の場合は、超音波を溶接部に直接当てる直射法と、超音波を底面に当て反射した超音波で溶接部を狙う1回反射法を組み合わせ、かつ余盛の両側から探傷します(片面両側)。

板厚が厚く、ビーム路程が250mmを超える場合は、表面側だけでなく、底面側を含めた両側から探傷します(両面両側)。

検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等の必要事項を記録します。

次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。

T継手溶接部の探傷

T継手溶接部の探傷

溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
溶接の品質は、溶接条件や溶接工の技量により大きく左右され、不適切な溶接はきずの原因となり重大な事故につながる可能性もあります。このため、溶接部の品質確認は非常に重要で、超音波探傷器はこの品質確認のために広く使用されています。

ここでは、鋼のT継手溶接部の超音波探傷について説明します。

※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。

測定方法

平板突合せ継手溶接部の探傷では斜角探触子を使用しましたが、T継手溶接部の探傷では、斜角探触子に加えて垂直探触子も使用します。
JIS Z 3060では、垂直探触子の公称周波数および振動子の公称寸法を以下のように定めています。
斜角探触子については、平板突合せ継手溶接部の探傷を参照ください。

探傷器の調整

斜角探傷では、STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
垂直探傷子では、STB-A1試験片等を用いて、測定範囲の調整を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内ごとおよび作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。

装置の調整項目 使用する試験片等
入射点の測定(0.5mm単位) STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32
測定範囲の調整
STB屈折角の測定(0.1°単位)
探傷屈折角の測定(0.1°単位) STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法

エコー高さ区分線の作成と領域区分

同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。

斜角探傷ではSTB-A2系試験片もしくはRB-41を、垂直探傷ではRB-41を使用して、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下をI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間をⅢ、H線より上をⅣとします。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

装置の調整項目 探触子 使用する試験片
エコー高さ区分線の作成 斜角探触子 STB-A2、STB-A21、RB-41A、RB-41B
垂直探触子 RB-41A、RB-41B

探傷感度の調整

斜角探傷ではSTB-A2系試験片やRB-41を、垂直探傷ではRB-41を用い、標準穴のエコー高さがH線に一致するように探傷感度を調整します。

装置の調整項目 探触子 使用する試験片
探傷感度の調整 斜角探触子 STB-A2、STB-A21、STB-A3、STB-A31
STB-A32、RB-41A、RB-41B
垂直探触子 RB-41A、RB-41B

探傷

きずの傾きによる見落としを防ぐため、使用するビーム路程が250mm以下の場合は、超音波を溶接部に直接当てる直射法と、超音波を底面に当て反射した超音波で溶接部を狙う1回反射法を組み合わせて探傷します(片面片側)。

板厚が厚く、ビーム路程が250mmを超える場合は、表面側だけでなく底面側からも探傷します(両面片側)。

垂直探傷では、直交する外面に探触子を接触させ探傷します。

探傷面、探傷範囲および周波数

探触子 探傷面 探傷範囲 使用する最大のビーム路程 周波数
斜角探触子 片面片側 直射法および
1回反射法の範囲
100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
両面片側 直射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
垂直探触子 片面
母材表面
探傷面~設計溶接
溶込み部
40mm以下 5MHz
40mmを超え 60mm以下 2または5MHz
60mmを超える場合 2MHz

検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等の必要事項を記録します。

次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。

角継手溶接部の探傷

角継手溶接部の探傷

溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
角(かど)継手は、ケースやボックスの製作で利用されている溶接継手の一種で、二つの母材がほぼ直角に交わるその角のL字型の溶接継手のことです。

ここでは、鋼の角継手溶接部の超音波探傷について説明します。

※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。

測定方法

鋼の角継手溶接部の超音波探傷は、T継手溶接部と同様に、斜角探触子と垂直探触子を使用します。
JIS Z 3060では、垂直探触子の公称周波数および振動子の公称寸法を以下のように定めています。
斜角探触子については、平板突合せ継手溶接部の探傷を参照ください。

探傷器の調整

斜角探傷では、STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
垂直探傷子では、STB-A1試験片等を用いて、測定範囲の調整を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内ごとおよび作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。

装置の調整項目 使用する試験片等
入射点の測定(0.5mm単位) STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32
測定範囲の調整
STB屈折角の測定(0.1°単位)
探傷屈折角の測定(0.1°単位) STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法

エコー高さ区分線の作成と領域区分

同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。

斜角探傷ではSTB-A2系試験片もしくはRB-41を、垂直探傷ではRB-41を使用して、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下をI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間をⅢ、H線より上をⅣとします。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

装置の調整項目 探触子 使用する試験片
エコー高さ区分線の作成 斜角探触子 STB-A2、STB-A21、RB-41A、RB-41B
垂直探触子 RB-41A、RB-41B

探傷感度の調整

斜角探傷ではSTB-A2系試験片やRB-41を、垂直探傷ではRB-41を用い、標準穴のエコー高さがH線に一致するように探傷感度を調整します。

装置の調整項目 探触子 使用する試験片
探傷感度の調整 斜角探触子 STB-A2、STB-A21、STB-A3、STB-A31
STB-A32、RB-41A、RB-41B
垂直探触子 RB-41A、RB-41B

探傷

きずの傾きによる見落としを防ぐため、超音波を溶接部に直接当てる直射法と、超音波を底面に当て反射した超音波で溶接部を狙う1回反射法を組み合わせて探傷します(片面片側)。

垂直探傷では、直交する外面に探触子を接触させ探傷します。

探傷面、探傷範囲および周波数

探触子 探傷面 探傷範囲 使用する最大のビーム路程 周波数
斜角探触子 片面片側 直射法および
1回反射法の範囲
100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
垂直探触子 片面
母材表面
探傷面~設計溶接
溶込み部
100mm以下 5MHz
100mmを超え 150mm以下 2または5MHz
250mmを超える場合 2MHz

検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等の必要事項を記録します。

次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。

円周継手溶接部の探傷

円周継手溶接部の探傷

溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
溶接の品質は、溶接条件や溶接工の技量により大きく左右され、不適切な溶接はきずの原因となり重大な事故につながる可能性もあります。このため、溶接部の品質確認は非常に重要で、超音波探傷器はこの品質確認のために広く使用されています。

ここでは、探傷面の曲率半径が50mm以上1,000mm未満の鋼の円周継手溶接部の超音波探傷について説明します。

※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。

測定方法

鋼の円周継手溶接部の超音波探傷では、平板突合せ継手溶接部の探傷と同様に、斜角探触子を使用します。
JIS Z 3060では、使用する斜角探触子の公称周波数、屈折角および振動子の公称寸法を以下のように定めています。

垂直探触子に通常使用する公称周波数

使用する最大のビーム路程 公称周波数
100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz

使用する斜角探触子の振動子の公称寸法

振動子の公称寸法
10×10 以上 20×20 以下

使用する斜角探触子の公称屈折角

試験体の板厚 STB音速比 探傷に適用する屈折角
6mm以上、25mm以下 0.990未満 探傷屈折角63°以上72°以下
0.990以上、1.020以下 STB屈折角63°以上72°以下
1.020を超える 探傷屈折角63°以上72°以下
25mmを超え、75mm以下 0.995未満 探傷屈折角58°以上72°以下
0.995以上、1.015以下 STB屈折角58°以上72°以下
1.015を超え、1.025以下 STB屈折角58°以上67°以下
1.025を超える 探傷屈折角58°以上72°以下
75mmを超える 0.995未満 探傷屈折角58°以上67°以下
0.995以上、1.025以下 STB折角58°以上67°以下
1.025を超える 探傷屈折角58°以上67°以下

試験体の曲率半径が小さい場合、探触子と試験体の接触面積も小さくなり、適切な探傷が行えなくなるため、探触子の接触面を曲面加工する必要があります。

探触子の接触面の曲面加工

試験体の曲率半径
50mm以上、250mm未満 250mm以上
外面からの探傷 ジグの使用または接触面の加工を行う ジグは非使用および接触面の加工を行わない
内面からの探傷 接触面の加工を行う 接触面の加工を行わない

探傷器の調整

STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内ごと、および作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。

装置の調整項目 使用する試験片等
入射点の測定(0.5mm単位) STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32
測定範囲の調整
STB屈折角の測定(0.1°単位)
探傷屈折角の測定(0.1°単位) STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法

※探触子に曲面加工を行っている場合の入射点・測定範囲・屈折角の測定および調整方法は、曲面加工を行っていない場合と異なります。
詳細はJIS Z 3060-2015の付属書Cを参照ください。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。

RB-41A、RB-41B、RB-42またはRB-A6を使用し、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下をI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間を、HⅢ線より上をⅣとします。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

試験片の適用範囲

調整項目 曲率半径
試験片の適用範囲
エコー高さ区分線の作成 試験片の適用範囲

探傷感度の調整

RB-41A、RB-41B、RB-42またはRB-A6を用い、調整します。

使用する試験片 探傷感度の調整方法
RB-42 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整する
RB-A6 公称屈折角70°を使用する場合は、標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整する
公称屈折角65°を使用する場合は、標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整する
公称屈折角45°を使用する場合は、標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整した後、ゲインを6dB上げる
RB-41A 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整し、感度補正量の合計値が2dBを超える場合には、感度補正量を加える
RB-41B 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整し、感度補正量の合計値が2dBを超える場合には、感度補正量を加える

試験片の適用範囲

調整項目 曲率半径
試験片の適用範囲
探傷感度の調整 試験片の適用範囲

探傷

きずの傾きによる見落としを防ぐため、2方向以上の超音波ビームで行います。

探傷面、探傷範囲および周波数

内外面の探傷 探傷面 探傷範囲 使用する最大のビーム路程 周波数
外面だけ探傷可能な場合 外面(凸面)両側 直射法および1回反射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
内外面ともに探傷可能な場合 外面(凸面)両側 直射法および1回反射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
両面両側 直射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz

検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等の必要事項を記録します。

次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。

長手継手溶接部の探傷

長手継手溶接部の探傷

溶接は、金属を溶かして接合部を一体化する方法の1つで、自動車、船舶、建設機械、建築物など、あらゆる金属構造物で使用されています。
溶接の品質は、溶接条件や溶接工の技量により大きく左右され、不適切な溶接はきずの原因となり重大な事故につながる可能性もあります。このため、溶接部の品質確認は非常に重要で、超音波探傷器はこの品質確認のために広く使用されています。

ここでは、探傷面の曲率半径が50mm以上1,500mm未満で、肉厚対外径比が16%以下の鋼の長手継手溶接部の超音波探傷について説明します。

※詳細は、JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)をご参照ください。

測定方法

鋼の長手継手溶接部の超音波探傷では、円周継手溶接部の探傷と同様に、斜角探触子を使用します。
JIS Z 3060では、使用する斜角探触子の公称周波数、屈折角および振動子の公称寸法を以下のように定めています。

試験体の曲率により、探触子と試験体の接触面積が小さくなり適切な探傷が行えなくなるため、以下に従い探触子の接触面を曲面加工します。

探触子の接触面の曲面加工

探傷位置 探触子の長さ 試験体の曲率半径
50mm以上 200未満 200mm以上 250未満 250mm以上 750未満 750mm以上
外面からの探傷 26mm以下 ジグの使用または接触面の
加工を行う
接触面の加工を行わない
26mm超え 36mm以下 ジグの使用または接触面の加工を行う 接触面の加工を行わない
内面からの探傷 26mm以下 ジグの使用または接触面の加工を行う 接触面の加工を行わない
26mm超え 36mm以下 ジグの使用または接触面の加工を行う 接触面の加工を行わない

探傷器の調整

STB-A1試験片またはA3系試験片を使用して、入射点の測定、測定範囲の調整、屈折角の測定を行います。
入射点、STB屈折角、測定範囲および探傷感度は、作業開始時だけでなく、作業開始後4時間以内ごと、および作業終了時に点検し、これら条件の変化量を確認する必要があります。

装置の調整項目 使用する試験片等
入射点の測定(0.5mm単位) STB-A1、STB-A3、STB-A31、STB-A32
測定範囲の調整
STB屈折角の測定(0.1°単位)
探傷屈折角の測定(0.1°単位) STB音速比、V透過法または、対比試験片による方法

※探触子に曲面加工を行っている場合の入射点・測定範囲・屈折角の測定および調整方法は、曲面加工を行っていない場合と異なります。
詳細はJIS Z 3060-2015の付属書Dを参照ください。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

同じ大きさのきずでも、探触子からの距離(ビーム路程)が近いとエコーの高さは高くなり、遠くなると低くなります。探触子からきずまでの距離(ビーム路程)が異なっても、同じ大きさのきずを同じように評価する必要があり、このためにエコー高さ区分線を作成します。

RB-41A、RB-41B、RB-43を使用し、6dBずつゲインを変えた3本のエコー高さ区分線を作成し、上からH線、M線、L線とします。
(L線は、きずエコーの評価に用いられるビーム路程の範囲で、その高さが10%以上ある必要があります。)
エコー高さの領域区分は、L線より下をI、L線とM線の間をⅡ、M線とH線の間をⅢ、H線より上をⅣとします。

エコー高さ区分線の作成と領域区分

試験片の適用範囲

調整項目 曲率半径
試験片の適用範囲
エコー高さ区分線の作成 試験片の適用範囲

探傷感度の調整

RB-41A、RB-41B、RB-43を用い、探傷感度を調整します。

試験片の適用範囲

調整項目 曲率半径
試験片の適用範囲
探傷感度の調整 試験片の適用範囲
使用する試験片 探傷感度の調整方法
RB-41A 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整し、感度補正量の合計値が2dBを超える場合には、感度補正量を加える
RB-41B 標準穴のエコー高さがH線に一致するようにゲインを調整し、感度補正量の合計値が2dBを超える場合には、感度補正量を加える
RB-43 探傷を行う面と同じ面から探傷した場合の標準穴のエコー高さをH線に一致するようにゲインを調整する

探傷

探傷は、きずの傾きによる見落としを防ぐために2方向以上の超音波ビームで行います

探傷面、探傷範囲および周波数

内外面の探傷 探傷面 探傷範囲 使用する最大のビーム路程 周波数
外面だけ探傷可能な場合 外面(凸面)両側 直射法および1回反射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
内外面ともに探傷可能な場合 外面(凸面)両側 直射法および1回反射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz
両面両側 直射法の範囲 100mm以下 3.5~5MHz
100mmを超え 150mm以下 2~5MHz
150mmを超え 250mm以下 2~3.5MHz
250mmを超える場合 2MHz

検出レベルは、M線を超えるきずを対象とするM検出レベルと、L線を超えるきずを対象とするL検出レベルのいずれかを、当事者間の話し合いで決めます。
定められた範囲を探触子走査し、M検出レベルの場合は最大エコー高さがM線を超えるきずを、L検出レベルの場合は最大エコー高さがL線を超えるきずを評価対象とします。評価対象のきずエコーを検出したら、その時の探触子位置、ビーム路程、エコー高さの領域区分等の必要事項を記録します。

次に、きずの指示長さを測定します。きずの指示長さとは、溶接線に平行な方向の長さです。きずの最大エコー高さを検出した位置から、左右走査(溶接線に平行に探触子を走査)を行い、エコー高さがL線を超える範囲がきず指示長さとなります。

きず位置の推定方法

長手継手溶接部の探傷では、曲率のために平板探傷時と同じビーム路程でも、きずの深さや探触子きず位置が異なります。

このため、計算によりきず位置を推定する必要があります。
超音波探傷DFXシリーズには、外面からの探傷について、外径を入力することで傷の深さや探触子きず位置を自動的に計算し表示する曲面補正機能 (CSC)が搭載されています。

きず位置の推定方法

幾何学に基づく計算方法

探傷位置 探傷法 きず位置 計算式
外面からの探傷 直射法 きずの深さ d = R - (R・sinθ/sinθd)
探触子きず距離 yd = π・R(θd-θ)/180
一回反射法 きずの深さ d = R - (R・sinθ/sinθd)
探触子きず距離 yd = (YU-π・R(θd-θ))/180
内面からの探傷 直射法 きずの深さ d = (r・sinθ/sinθd) - r
探触子きず距離 yd = π・r(θ-θd)/180
一回反射法 きずの深さ d = (r・sinθ/sinθd) - r
探触子きず距離 yd = YU - π・r(θ-θd)/180

※詳細はJIS Z 3060-2015の付属書Dを参照ください。

幾何学に基づく計算方法

鋳鉄品の探傷

鋳鉄品の探傷

鋳鉄は、ねずみ鋳鉄(FC)、CV黒鉛鋳鉄(FCV)、球状黒鉛鋳鉄(FCD)の3種類に大別され、自動車をはじめ様々な製品・部品に、それぞれの用途に応じて使用されています。

鋳鉄品の超音波探傷検査は、堰や押し湯付近、肉厚部等の最終凝固部の引け巣が発生しやすい箇所で、実施されています。
鋳鉄品は形状が複雑で、表面も鋳肌のため平滑でなく、さらに超音波の減衰も大きいため、一般的な鋼材の超音波探傷検査に比べると難しく、慎重に実施する必要があります。

測定方法

下の絵は、健全な鋳鉄品と、きずのある鋳鉄品の超音波探傷のイメージ図です。
健全な鋳鉄品では、送信パルスと底面エコーの間にエコーが表示されませんが、きず(引け巣)がある鋳鉄品の測定では、きずからのエコーが表示されます。
このきずエコーの表示有無により、きずの有無を判断します。

対比試験片

検査に当たり、まず検出したいきずの位置および大きさを決めます。次に、その位置に人工きず(ドリルの平底穴や横穴)を施した対比試験片を作成します。
対比試験片は、試験条件を決めるために大切な試験片です。

探触子(プローブ、トランスデューサー)

一般的に2~5MHzの周波数の探触子を使用し検査を行います。
厚物の測定では、周波数が低く、径が大きい探触子を使用し、薄物や表面近くにあるきずの探傷ではニ振動子探触子を使用します。
また、探傷面が粗い場合は、保護膜付きの探触子や粘性のある接触媒質を使用します。

探傷

超音波探傷器で、ゼロ点および音速、測定範囲を調整します。次に、作成した対比試験片の人工きずからの最大エコー高さが、80%になるように感度を調整します。これが試験感度となります。

きずを見逃さないように、探傷感度に6dBまたは12bB足し、粗探傷を行います。きずを検出した場合、鋳鉄品の該当箇所に印をつけ、探傷感度を試験感度に戻し、再度その傷を探傷します。最大エコー高さが80%を超えた場合、きずの大きさは人工きずよりも大きいものと判断することができます。

アンカーボルトの長さ測定

アンカーボルトの長さ測定

アンカーボルトとは、構造物や設備機器をコンクリートの基礎に固定するために、コンクリートに埋め込んで使用するボルトのことです。

基礎部分に埋め込まれたアンカーボルトは、構造体や設備機器の底部に貫通させナットで固定します。構造物や設備機器は風や地震等から力を受けますが、アンカーボルトはそれらの力により構造物や設備機器が基礎から分離・転倒することを防ぎます。
しかしながら、不正等によりアンカーボルトの埋め込み長さが不足していると必要な強度が得られず、風や地震等の力により基礎から分離・転倒する恐れが生じます。このため、アンカーボルトの長さを把握することは非常に重要です。

ここでは、超音波探傷器を用いたあと施工アンカーボルトの長さ測定方法について説明します。

※詳細は、「超音波パルス反射法によるアンカーボルト長さ測定要領(案)」(国土交通省 平成15年11月14日)を参照ください。

測定方法

超音波探傷器を用いて、アンカーボルトの長さを簡単に短時間で、そして正確に測定することができます。

探触子(プローブ、トランスデューサー)

アンカーボルトの長さ測定では、通常、周波数が5MHzで、振動子の公称寸法が10~20mmの垂直探触子を使用します。アンカーボルト測定面の断面積以下の大きさの探触子を使用します。

探触子 公称周波数 振動子の公称寸法
垂直探触子 5MHz 10mm~20mm

探触子(プローブ、トランスデューサー)

ゼロ点調整

STB-A1試験片、もしくは測定対象のアンカーボルトと同等の材質の対比試験片で、ゼロ点調整を実施します。
試験片に探触子を密着させ、底面(先端)エコーのエコー高さを80%に調整します。超音波探傷器に試験片の実測長が表示されるように、ゼロ点と音速を調整します。ビーム路程の測定は、ピーク位置で行います。また、測定範囲はアンカーボルトの2倍程度に設定します。

ゼロ点調整

感度調整

実際の施工に用いた同種のアンカーボルトを使用し、感度の調整を行います。
探触子をボルト頭部に密着させ、底面(先端)エコーのエコー高さを80%に調整します。ゲートレベルを20~50%に、ゲート幅はアンカーボルトの長さ以上に設定します。探傷器に表示される長さが実測長の±1%を超える場合は、音速を調整し±1%以内にします。なお、ビーム路程の測定は、ピーク位置で行います。

アンカーボルトの長さ測定

探触子が密着できるようにアンカーボルトの頭部を平滑に処理します。また汚れなどが付着している場合はきれいに拭き取ります。頭部の凹みの処理や汚れの除去を行わないと、超音波がボルトに入射できないため、測定ができない場合があります。

ボルト頭部に探触子を接触させ、ボルト先端からの底面(先端)エコーの中で、最もビール路程が短いエコー高さを50~80%に調整し、ピーク位置でビーム路程を読み取ります。読み取った値を、アンカーボルトの測定値とします。
底面(先端)エコーが確認できない場合や、設計長との差が大きい場合は、頭部処理を入念に行い、再度測定を実施します。アンカーボルトの曲りが大きい場合には測定できない場合もあります。測定ができない場合は、「測定不能」とします。

必要事項を測定結果として記録します。
DFXシリーズおよびST-10では、ボタン1つで測定画面(Aスコープ、測定条件)を保存することができるため、現場での測定結果の記録を効率化することができます。

容器内の水位(液面高さ)の測定

容器内の水位(液面高さ)の測定

安全上の理由により容器内の液体を空気に露出させてはいけない場合や、容器の開封に多大な労力が必要な場合、容器内部の液体の水位(液面高さ)を確認することは非常に困難です。
超音波探傷器は、密閉された容器内の液体の水位(液面高さ)の測定にも用いることができ、容器や配管内の水位(液面高さ)や液体の有無を非常に簡単に確認することができます。

ここでは、容器内の水位(液面高さ)の測定方法について説明します。

測定方法

通常、公称周波数が2~5MHz、振動子の公称寸法が10~20mmの垂直探触子を使用しますが、容器の形状や表面状態、液体の種類により超音波の減衰が大きく測定できない場合があります。そのような場合は、状況にあわせて適切な探触子を使用してください。

まず、内部の液体の水位(液面高さ)が既知の容器を用意し、容器の底部に探触子を密着させます。探傷器に表示された第一回底面エコーと第二回底面エコーを使用して液体の音速とゼロ点の調整を行います。ビーム路程はピーク位置で測定を行い、エコー高さはそれぞれ80%になるよう調整し二点校正(音速とゼロ点の調整)を実施します。調整後、一回目の底面エコーのエコー高さが80%になるように、再度感度を調整します。

次に、測定を行う容器の底部に探触子を密着させます。液体表面に波が生じないようにゆっくり接触させてください。振動等により液体表面に波が生じると、探触子からの距離が安定しないため、探傷器本体に測定値が表示されない場合があります。

容器の底に探触子を接触させることができない場合は、側面に接触させることでおおよその水位(液面高さ)を把握することができます。
内部に液体がある箇所では、探触子から容器に入射した超音波は液体を伝播し、反対側の容器側面に反射し底面エコーとして探傷器に表示されます。一方、液体が無い箇所では底面エコーは表示されません。
探触子を容器に接触したまま下から上にスキャンしていくと、液体が無い箇所で底面エコーが消失します。その消失点がおおよその水位(液面高さ)となります。

接着・剥離検査

接着・剥離検査

配管内側のライニングのような金属と樹脂(ゴム)の接着や、樹脂と樹脂の接着、金属同士の溶接やろう付けなどの接着・剥離の確認を、超音波探傷器を使用して行うことができます。
ここでは、多重エコーの減衰カーブから接着・剥離を識別する方法について説明します。

樹脂・ゴム等の音響インピーダンスが相対的に低い素材に探触子を接触させ、金属・セラミック・ガラス等の音響インピーダンスが相対的に高い素材との接着・剥離を確認する方法については、異材の接着・剥離検査を参照ください。

測定方法

探触子との接触面の材質が金属の場合は、公称周波数5MHzの一振動子探触子を、樹脂の場合は2~5MHzの一振動子探触子を使用します。素材の厚みが薄い場合は、遅延材付きの探触子を使用します。探触子は、素材の厚さや表面状態・形状等により、状況に応じ適切な探触子を選択ください。

接着(溶着)には、金属と金属や樹脂と樹脂のように似た素材同士の接着(溶着)と、樹脂と金属のように異なる素材での接着があります。似た素材での接着と異なる素材での接着では、判定方法が若干異なります。
初めに似た素材同士の接着・剥離検査方法について説明し、次に異なる素材での接着について説明します。

似た素材同士の接着(音響インピーダンスが近い素材同士の接着)

金属と金属、樹脂と樹脂の接着(溶着)は、音響インピーダンスが近い素材同士の接着となります。
音響インピーダンスが近い素材間では、境界面で反射する超音波は少なく、大部分が透過します。境界面で反射した超音波エコーの高さを超音波探傷器で観察すると、接着時には大部分のエコーが透過してしまうため、境界面からのエコーは非常に低くなります。
一方、剥離している場合は境界面でエコーがすべて反射し戻ってきますので、高いエコーを観察することができます。
金属と金属の溶接・ろう付けや、樹脂同士の接着のように音響インピーダンスが近い素材の接着は、このように比較的簡単に識別することができます。

異なる素材の接着(音響インピーダンスが異なる素材の接着)

一方で、金属と樹脂のように異なる素材の接着は、音響インピーダンスが異なる素材の接着となります。
音響インピーダンスが異なる素材間では、境界面でを透過する超音波はわずかで、大部分が反射します。このため、接着時と剥離時の境界面からのエコー高さの差は僅かとなります。
ただ、境界面からの多重エコーで比較すると、接着時はわずかながら境界面を透過する超音波が存在するため減衰率が剥離時よりも高くなります。
以下は、接着時の境界面からの多重エコーと、剥離時の境界面からの多重エコーです。比較しやすくするために、接着時の境界面からの多重エコーをもとにDAC線を作成しています。剥離時は、多重エコーが全体的に高くなりDAC線を超えていることが分かります。
このように、異なる素材の接着・剥離検査は、多重エコーをもとに判定します。

異なる素材の接着で、樹脂側に探触子を接触させることができる場合は、位相の反転から接着を確認する方法(異材の接着・剥離検査)の方がより簡易的に判定できますので、そちらを参照ください。

異材の接着・剥離検査

異材の接着・剥離検査

自動車をはじめとする様々な工業製品では、金属と樹脂が一体化された部品が使用されています。加工が容易で軽量、電気絶縁性の樹脂部品と、導電性で強度に優れた金属部品をそれぞれ必要な箇所に一体化して使用することで、部品点数を減らすだけでなく、両方の利点を持つ部品を製作することができるためです。

また、異材の接着は金属パイプやタンクの樹脂ライニング、金属ローラーのゴムコーティング等でも行われています。

ここでは、金属・セラミック・ガラス等の音響インピーダンスが相対的に高い素材と、樹脂・ゴム等の音響インピーダンスが相対的に低い素材との接着・剥離検査の方法について説明します。

測定方法

樹脂(ゴム)と金属(セラミック)の接着・剥離検査では、探触子との接触面が樹脂の場合には2~5MHz、ゴムの場合には0.5~2MHzの公称周波数の垂直探触子を使用します。ただし、樹脂やゴムの厚みや表面状態・形状等により、金属との境界面で反射したエコーが表示されない場合は、より低周波で振動子径の大きな探触子を使用する等、状況に応じ適切な探触子を選択ください。

まず、超音波探傷器の波形表示を「RF」に設定します。次に、探触子を樹脂(ゴム)側に密着させます。
金属側にしか探触子を接触させることができない場合には、今回の方法は適用できず、別の方法(エコー高さの減衰カーブから溶着・剥離を識別する方法)で判定します。

樹脂と金属が適切に接着している場合と、剥離している場合では、樹脂と金属の境界で反射するエコーの位相が180度反転します。
以下の接着が良好な場合と、剥離の場合のエコーを比較すると、位相が上下に判定していることが分かります。
このように、樹脂・ゴム等の音響インピーダンスが相対的に低い素材側から、金属・セラミック・ガラス等の音響インピーダンスが相対的に高い素材の接着・剥離の確認は、エコーの位相変化を読み取ることで識別することができます。

超音波スポット溶接検査装置の測定原理

超音波スポット溶接検査装置の測定原理

超音波スポット溶接検査は、スポット溶接の良否を非破壊で判定することができる優れた検査手法です。
自動車業界を中心に、鉄道、航空機など様々な分野で超音波でのスポット溶接検査が行われています。

超音波スポット溶接検査は、探触子(プローブ、トランスデューサー)という超音波センサーを、溶接部に密着させて行います。

溶接部に密着させた探触子からは、超音波が出力され、測定箇所を「やまびこ」のように繰り返し反射します。(下左図)
この繰返し反射する超音波は、右下絵のようにディスプレイに表示されます。

測定方法

繰返し反射する超音波のパターン(減衰率、波形)は、溶接状態(良好、未溶接、小ナゲットなど)により異なります。
超音波によるスポット溶接検査では、この特徴を利用し、スポット溶接部の合否判定を行います。